第6章 恋の方程式
『ねぇクロ、さっきから誰とラインしてんの?携帯ばっか見てんじゃん』
「あ、何。気になんの?」
『別にー。クロに引っ掛かった女の子が可哀想だなって!』
「余計なお世話だっつの。俺はちゃーんと好きな子ができたら大事にしますぅー」
『ふーん?今まで長続きしたことないくせに?……って。…それは、私のせいか』
言ってから、なまえはしょぼんと俯いてしまった。
そんな彼女を前に、黒尾は思う。
――告白されて、付き合って、なんて事は今まで何度かあったけれど、どれもそう長くは続かなかった。練習で忙しいのは言わずもがな、どうやらなまえとの関係性が彼女たちは皆気に食わなかったようで、散々文句を言われた挙句勝手に離れていった。
まぁ普通に考えて、付き合っている子以外の女の子の部屋に遊びに行ったり、部屋に遊びに来たりなんて、いくら幼馴染と言えど、嫌に決まっている。けれど、自分にとってはそれが、小さい頃から当たり前にしてきた事で、日常で、自分の一部だ。陽が暮れるまでバレーをして、夜遅くまで一緒にゲームをしたり、バレーのビデオを見たり。
他の街から引越してきて、ひとりぼっちだった自分と。二人は、いつも一緒にいてくれた。研磨となまえ以上に、大切なものなんてなかった。それは今も変わらないし、これからも変わらない。だからそれを理解してくれない彼女なんて、まぁ、要するに、こっちから願い下げだということだ。