第7章 36℃
「彼女が出来たから」
「「「「「は!?!?!?」」」」
何故か、後ろや隣の隣の席に座っていた関係のない人たちまで驚いている。
「か、彼女!?嘘だろおま、赤葦おま、誰だよそれ!?」
「は、いつ!?いつだよ、お前一切そういう気配なかったじゃん!!」
「赤葦に彼女とかもはや都市伝説の域だぞ!?」
「おまえ赤葦か!?ホンモノの赤葦か!?さては偽葦か!?」
「彼女って何組!?つうか先輩!?もしかして男バレのマネージャーとか!?」
捲し立てるように口々に質問が飛んでくる。そんなに驚くことなのか、と若干面倒に思いながらも、赤葦は続けた。
「いや、同じ学校じゃない。そういう事だから、ごめん」
素っ気ないその言葉に、鳥崎はむっと一瞬怒ったような顔をしたけれど、すぐに切り替えたように笑顔で口を開いた。
「それでも私、諦める気ないから!」
鳥崎はそれだけ告げると、さっさと姿を消してしまった。ぽかんとしている赤葦に、クラスメイトがぐいぐいと肘で小突いてくる。
「おい赤葦。鳥崎ちゃんにあんだけ言わせるってすげーぞ?誰が告ってもokしないで有名なんだぜ?」
「そうなんだ」
「それよりお前ッ、彼女って誰だよ!?なんで言ってくれなかったんだよ!?」
「わざわざ自分から申告するような事でもないと思ったから。別に聞かれることもなかったし」
「で、で、どんな女の子なんだよ?どこの高校の子?」
「…それは、彼女に話していいか許可をもらってからということて。それじゃ、ご馳走さま」
「あ、待てよ赤葦―――!」
しつこいクラスメイトたちの嘆きも虚しく、赤葦はせっせと食器を片付けに行ってしまったのだった。