第6章 恋の方程式
「―――よし、今日はここまで。今日の午後は存分に体力を回復するように!」
猫又監督の言葉に、部員一同の威勢の良い返事が体育館に木霊した。
「なーなー、今日これからどっかいかねー?」
「いーっすね!行きましょう!」
「久しぶりにみんなでゲーセンでも行くか」
夜久に山本、海がわいわいと楽しそうに話す隣で。黒尾がぽん、となまえの背中を叩いた。
「なまえ、お前も来るだろ?」
『……うーん……』
気の乗らない返事に、黒尾は続ける。
「何。もしかして予定でもあんの?」
『…ないけど』
「んじゃ行くだろ」
『…遊ぶって気分でもないし』
「じゃ帰って何すんの」
『研磨とゲーム…』
「嫌だよ」
なまえの言葉に、背後にいたらしい研磨がすかさず口を開いた。
『なんでよ!?』
「今日は無理。クリアしなきゃいけないゲーム溜まってる」
『一緒にやればいいじゃん!』
「無理。足手まといにしかならないし」
『は!意地悪!ケチ!ケチ研磨!!』
「どうとでも言えば。とにかく、今日はなまえもクロも”邪魔”しないでね」
研磨の目がぎろりと光る。
そして、黒尾となまえはその視線だけで察した。
これは、本気(マジ)なやつだ、と――。
合宿に練習と忙しい日々が続いていたせいで、やりたかったゲームがろくにやれていなかったのだろう。これは、本気でゲームをやりこむときの研磨のマジ顔だ。
そんな研磨を前に苦笑している黒尾となまえに、研磨はくるりと背を向けて「じゃ」と一言。そして、練習中ですら見れないスピードで研磨は体育館から姿を消した。
「……だってさ、どんまい」
『………』
「ほら、行こーぜ。お前今一人にするとろくな事考えなさそうだし」