第5章 cross in love
『………はぁ』
「うるさい」
本日何度目かわからないため息をついていれば、隣から厳しい一言が飛んできた。誰から、なんて言わずもがな。スマホを横画面にしながらゲームをしている研磨は、画面を見ながらもう一度言った。
「さっきからうるさい」
『……ねぇ研磨、ため息ってうるさい?吐息だよ?もう息するなってこと?』
「ため息ばっかり吐くと幸せ逃げるってよく言うじゃん」
『はぁ……そうだよね……もう息しないほうがマシだよね』
「そんな事言ってない……」
めんどくさそうに研磨は画面から顔をあげる。黒尾や木兎たちの輪からそっと抜けてきたらしい元気のない幼馴染に、研磨も同じように、はあ、とため息を吐いてから続けた。
「なまえはさ、今まで頑張って進めてきたダンジョンのラスボス相手に初戦でHP0になったらそのままおしまい?一回やられたくらいで投げ出すの?」
『……それは……投げ出さないけど』
「でしょ?勝つまでやりこむでしょ?」
『うん……』
「じゃあ、頑張ればいいじゃん。今までの努力無駄にする気?」
『…でも。好きな子いる相手にどうやって頑張ればいいの』
「…はぁ。その赤葦の言う好きな子が、自分かもしれないって事は考えないの?」
研磨の一言に、なまえはぽかん、と口を開けてから全力で首を横に振った。
『なんて烏滸がましい!!何言ってんの研磨!!馬鹿じゃないの!!やめてよ!!』
「………」
全力で否定するなまえに、研磨がじとりとした視線を向けていれば。