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君という魔法【ハイキュー‼︎】

第5章 cross in love




そう言って、研磨はくるりと背を向けた。
そんな彼に、赤葦は慌てて口を開く。


「待って、俺がみょうじのこと、いつ泣かせたの?」

「自分の胸に聞いてみれば」

「………、」


その答えに、思わず口を噤む。

心当たりが全くないわけではない。だって、自分はなんなしに言った言葉だったとしても、受け取る側が傷付いたのであれば、それは相手の気持ちを考えられなかったこちらが悪いからだ。
彼女と話した会話の記憶はすべて鮮明に覚えているはずなのに。一体、いつ、どこで、どんな言葉で、彼女を傷つけてしまったのだろう。

いくら記憶を辿ってみても、思い当たる節が見つからない。というか、もしかして、自分が気付けていなかっただけで、今までにも何度か彼女のことを傷つけているのではないかと心底怖ろしくなった。
黒尾が言っていた、彼女に元気がないというのは。もしかすると、配慮の足りなかった自分のせいでもあるんじゃないだろうか。そんな風に思って、昨晩の事が頭を過る。

去り際の彼女の顔は、今にも泣き出しそうだった。

どうしてあの時、無理にでも追い駆けなかったのだろう、と激しい後悔が胸を襲う。追い駆けて欲しい人が、自分以外の誰かだとわかっていても。それでも、追いかけて・・・いや、追い駆けたところで、一体自分に何ができたというのだろう。

そんな思考に至って、どうしようもなく情けなくて、カッコ悪くて、心底自分にうんざりする。


むせ返るような思いに、痛いほど、拳を握った。



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