第5章 cross in love
「――今日は”メッチャ”食べるんじゃなかったんデスカー?」
二人が顔をあげれば。
そこにはにたり顔の月島と、その後ろに山口がこっそり立っている。
『あ、蛍くん!私今日めっちゃ食べたからね!肉!』
「えー?僕は見てないんですけどー」
『さっき皿にてんこ盛りの肉食べたんだよ!?本当だよ!?ていうか蛍くんこそ食べてないでしょ!食べなさいよ!』
「うわ、自分が食べられないからって押し付けないでくださいよ」
『いや、余裕だわ。なんならその皿の肉全部食べるし。今日はやけ食いだ!』
そういって月島の皿を取り上げ肉をもぐもぐと食べ始めるなまえを見ながら、研磨は再びため息を吐く。
先ほど、赤葦に助言をしたつもりではあるけれど、果たしてあれが正解だったのかはわからない。赤葦は、多分、というか絶対、いい奴だ。真面目で、義理堅くて、優しくて。然程関わりのない自分から見ても、よくわかる。だから、彼が意図的になまえを泣かせたんじゃないことも、勿論わかっている
けれど、自分達で気付く以外に方法がないのだから、少々厳しく言ってしまったことは大目に見てほしい。
――めんどくさい二人が、どうか。
早くお互いの気持ちに気付きますように、と。
真夏の太陽を、祈るように見上げた。