第5章 cross in love
「ただ自主練に付き合ってもらってるだけですよ。木葉さん達も一緒にすればいいじゃないですか」
「「それはやだ」」
いくらマドンナがいると言えど。ただでさえ厳しい練習の後に木兎の際限のない自主練に付き合わされるのは御免のようだ。
「いやー、ほんっと可愛いよなぁ、みょうじちゃん。梟谷グループのマネちゃんズはレベル高ぇけどさ、みょうじちゃんはその中でも群を抜いてるよなぁ」
「わかるわかる!でも高嶺の花すぎて、気軽に話し掛けらんねェっつうか、なんか常に周りにおっかねぇのがいるよなぁ」
おそらく、音駒の山本や夜久、黒尾の事だろう。合同合宿中に至っては、山本を筆頭に烏野の西谷と田中までボディガード(?)に加わっている。あくまで遠目からだが、まるで般若心経のような顔で。あんなのが近くにいたら、よっぽど仲でも良くない限り迂闊に声なんて掛けられないだろう。
「赤葦お前さぁ、みょうじちゃんと一番仲良いんだろー?頼むよ」
木葉の言葉に、赤葦は眉をひそめる。
「…何を根拠に。みょうじと仲が良いと言えば、黒尾さんと弧爪だと思いますよ。幼馴染ですし」
「ウチ(梟谷)で、って意味だよ!お前らよく合同練習の時とか仲良さげに喋ってんじゃん!」
「そうだぞ赤葦!ごまかそうったって無駄だぜ!バレてんだからな!」
はあ、と適当に相槌を打ってから、彼女の姿を探す。
梟谷学園グループに烏野が加わって大分大所帯になっているけれど、そんな大勢のなかでも、彼女を見つけることは、赤葦にとって至極簡単なことだった。
女子マネージャー達が一点に集まって、何やら楽しげに話しているようだけれど。彼女は一人、どことなく浮かない顔をしているような気がした。
「みょうじならあそこにいます」
「んなこた知ってるよ!」
「だからお前に頼んでんだろっ!」
「……嫌ですよ。いくら多少仲が良いからといって、あの中に入るのは無理です」
あんな、女子マネージャー達がきらきらと楽しげに話しているところに割り込もうなんて、そんな空気の読めない人間いるわけが―――。
「へいへーい!なまえちゃん食ってるかー!」
―――いた。
言わずもがな。我らが主将、木兎光太郎である。
もはや彼には、空気を読むなんて概念は存在しないのであろう。