第5章 cross in love
合宿最終日の最終試合。
烏野vs梟谷の試合は、途中烏野が猛威を見せるも、2-0で梟谷の勝利に終わった。
そして、全ての試合を終え、ついに、待ちに待ったバーベキューが始まろうとしていた。
「――1週間の合宿、お疲れ諸君。空腹にこそ美味いものは微笑む。存分に筋肉を修復しなさい」
猫又監督の言葉とともに、一同は野獣の如く一斉に肉に食らいつく。
そんななか、黒尾は皿に肉をのせたまま、真っ先に赤葦の元へと向かった。赤葦は何故か烏野のセッターである影山の背中をさすっている。
「おーい、赤葦ー、ちょいちょい」
手招きしてみせれば、赤葦は肉を喉に詰まらせたらしい影山に水を渡してから、黒尾の元へとやってきた。
「どうしました?」
「どうしました、じゃねーよ。さっきの続き」
「ああ、俺が失恋した件についてですか?」
「……お、おぉ。つーか、何があったワケ、昨日」
「元気がないと聞いてから、心配でいてもたってもいられなくて、探したんですよ。そしたら屋上にいて。少し話したんですけど、その流れで」
「その流れで、何よ」
黒尾の問いに、赤葦は一瞬黙ってから、困ったように眉根を寄せた。
「…黒尾さんなら知ってるんじゃないんですか?俺の口からは言えません。女性にとってはデリケートな問題だと思いますので」
「………」
――この二人のことだから、大方の予想はつくけれど。
いくら相手が幼馴染と言えどもなまえのプライバシーを尊重しようとする赤葦は、本当に真面目なヤツだとしみじみ思いながら黒尾は口を開いた。
「…いや、でもさ、お前自分の気持ち伝えてねーんだろ?それは振られたって言わなくね?」
「厳密にはそうですけど、振られたも同然だと思います」