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君という魔法【ハイキュー‼︎】

第5章 cross in love






「あかーーしーー!!」


寝不足の頭に響き渡るような大きな声と共に、ドンッと背中に衝撃が走って、思わずバランスを崩して転げそうになるのをなんとかこらえてみせた。振り向かずともわかるこの声と気配に、赤葦はじとりと振り返り口を開いた。


「…おはようございます、木兎さん」

「はよーう!!って赤葦、なんか顔色悪くね?」


木兎の言葉にぎくりとしたが、そんな表情は毛ほども見せずに続ける。


「そうですか?気のせいですよ。いつもと変わらず元気ですし」

「ふーん?そう?じゃあ、俺の勘違い?」

「そうですね。木兎さんの勘違いです」


本当は、勘違いなんかじゃない。
けれど、実は昨晩一睡もできませんでした、なんて、まさか言えるわけがない。
合同遠征の真っ最中、ましてや最終日なのに、失恋したからなんて理由で怠けていい理由になるわけがないのだ。たとえ練習であろうと、副主将として、セッターとして、チームのために全力を懸ける。それが自分の使命なのだ。主将でありエースの木兎に心配をかけるなんて、以ての外だ。


「そうかぁ、勘違いならいいんだけどさ!」

「はい。ありがとうございます、木兎さん。朝食の時間ですので、食堂へ行きましょう」


そう言っている間に、ヘイヘーイと叫びながらハイテンションで食堂へ走って行く木兎の背中を早歩きで追い駆ける。食堂に着いてみれば、既にもう他校の面々で賑わっていて。気付けば、無意識に彼女の姿を探していた。


『あー、朝はちゃんと食べなきゃ駄目でしょ蛍くん』

「いやー、なまえさんにだけは言われたくないんですけどー」

『いっとくけど、”今日は”私食べるから!めっっちゃ食べるから!』

「プッ。期待してマース」


楽しそうに話しているなまえと月島の姿が視界に入って、きりきりと胸が痛む。昨晩、元気がない彼女を、自分はあんな風に笑わせてあげる事ができなかった。黒尾と約束したのに、なんて役立たずなのだろう、と、心底自分に嫌気がさした。そんなことを思っていれば、ふと、こちらを向いた彼女と目が合った。


『……赤葦。…おはよ!』


そういって笑った彼女の顔が、少し不自然に見えたのは、気のせいだろうか。


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