第5章 cross in love
「で、で、赤葦とはどんな感じ?」
「二人にはさぁ、前からなんかあるって部内でも噂になっててさぁ~!」
『…あはは、お二人が思ってるような事は何にもないですよ!…ただの、自主練仲間です!』
自分で言ってから、改めてショックを受けた。言葉にしてみれば、より一層現実を思い知らされた気がして。
「うっそー!?だって合宿とか合同練習あるたびに二人でいるとこ目撃されてるって噂だよ?」
「そ~そ~!赤葦のヤツ、なまえちゃんの前だと表情違うっていうかさぁ~、表情に乏しいあの赤葦がさぁ!」
『…自主練一緒にしてるし、同い年だからですよ!私も昔セッターやってたから話も合いますし。それに――』
言いかけて、思わず口を噤む。
「それに?」
―――赤葦には、好きな人がいるから。
『…いえ、なんでもないです!ていうかもうそろそろ朝食の時間じゃないですか?私、谷っちゃん起こしてきますね』
ごまかすように笑顔でそう告げて、なまえは女子トイレを逃げるように飛び出した。