第4章 交錯する想い
「………え、」
唐突な質問に、思わず反応が遅れた。
しばしの沈黙が流れて、これはどう答えるべきなんだろうかなんて混乱したけれど、ここは素直に答えるべきだと咄嗟に判断してから、赤葦は小さく頷いた。
「……ああ、うん」
控えめにそう答えれば、あまりに驚いたような顔をする彼女に、何かおかしなことを言っただろうかと内心焦る。
「……まあ、俺の片思いだけどね」
恥ずかしくなって思わず顔を逸らしてから、小さくそう付け足してみれば。彼女からの返事はない。
まさか片思いをしている相手に打ち明けるなんて、と更に顔が熱くなっていくのをごまかすように口を開いた。
「……みょうじは?」
『……え?』
「みょうじは、好きな人、いるの?」
未だに彼女の顔を見れないまま、問いかけた。ずっと聞きたかったのに、聞けなかったこと。答えを聞くのが怖かったはずなのに。今日は、勢い余ってか、聞きたいという素直な気持ちが勝利したようだ。
しばらく返事は返ってこなくて。やっぱりこんな質問はまずかったかな、なんて不安に思っておそるおそる隣を見やれば、露骨に顔をそらされた。
『……いるよ。……振られちゃったけど』
彼女の口から出た答えを聞いて、聞かなきゃよかった、なんて、むせかえるような後悔が胸を突いた。
それと同時に、黒尾さんが言っていた、彼女に元気がないというのはそういうことだったのか、と納得した。一体相手はどんな男なんだろうだとか、なんて言葉をかければ少しでも元気を出してくれるんだろうかとか、混乱した頭でぐるぐると慣れないことを考えていれば、彼女は再び口を開いた。
『…あかあし、の』
「……え…?」
『……、赤葦の、恋は叶うといいね。上着ありがと!おやすみ』
――そう言った顔が、どうしてか、今にも泣き出しそうで。