第4章 交錯する想い
『ちょ、大丈夫だってば!赤葦が風邪引いちゃうから!』
「俺は大丈夫。校内歩き回って、暑いくらいだし」
『…校内歩き回って?何か探しもの?』
「うん、ちょっとね」
『何かなくした?私も探すよ!』
「いや、大丈夫。もう見つかったから。…だから涼しくなるまで、預かっておいて」
『……ありがと…』
「俺が暑いだけだから。気にしないで」
赤葦の言葉に、なまえは面食らったような顔をしてから、ふふ、と笑った。
『赤葦って、いつもそうだよね』
「何が?」
『ほんとーに、いつも優しいなぁ、って』
そういってはにかんだように笑うなまえを見ていると、どこか安心したのと同時に、いつもみたいに頬が熱くなっていくのを感じて、赤葦はふいと顔を逸らした。
「…そうでもないよ。あんまり言われたことないし」
『みんな思ってるだけで、口に出さないだけだよ』
そうだったとしても。
素直に褒めてもらえるということは、すごいことなんだ。本当に、すごく嬉しいことなんだ。
「みょうじのそういう素直なところ、いいよね」
『え!?』
嬉しかったからこそ、自分も素直に返そう、と。そう思っただけなのだけれど。
あまりに驚くなまえの様子に、まずいことでも言ったのか、と赤葦の表情が思わず固まる。
「……え」
『いや、私、全っ然素直じゃないし!むしろクロにいつも怒られる!素直になれって!今日も怒られたばっかり!』
「そうなの?」
『そうだよ!…全然素直になれない。傷つくのが怖くて、意地ばっか張っちゃって…』
そういう彼女の横顔は、どこか儚げで。
元気がない事と、何か関係があるのだろうか。そうだとしたら、どんな会話をすれば少しでも笑顔になってくれるだろうか、なんて頭のなかで考えていれば、きれいな横顔が揺れた。
『……赤葦はさ。…好きな人とか、いる?』