第4章 交錯する想い
あの二人の反応からするに、なんだか面倒な展開になりそうだったので、適当な嘘をついてその場を凌いだところまではよかったのだけれど。
なまえが行きそうな場所を考えてみても、見当がつかないのだ。適当に校内を回ってみたけれど、彼女の姿はどこにもなかった。自分は彼女の事を全然知らないんだな、なんて心の中で自嘲してから、赤葦はポケットからスマートフォンを取り出した。
直接聞くのが一番早いのだろうけれど、今もし誰かと話しているのだとしたら突然連絡をしても迷惑だろう。黒尾に言われた通り、明日から実行すればよかったのだろうけれど。どうにも心配で、いてもたってもいられなかったのだ。だからこうして、探しているわけだが。
そんな事を思いながら、今度はとぼとぼと階段を昇っていれば、屋上の扉が半開きになっているのが見えた。
早足で階段を駆け上がって、扉を抜ければ。
そこには、屋上のフェンスに身体を預けて校庭を見下ろしているなまえの背中があった。
「……見つけた」
小さくそう呟いた声が、聞こえたのか、聞こえていないのか。
ゆっくりこちらを振り返ったなまえの柔らかな髪が、夜風に揺れた。
『……赤葦?』
驚いたように大きな目を更に見開く彼女に、赤葦はようやく見つけたと安心したように微笑んだ。
「そんな薄着でこんな場所にいたら、風邪引くよ」
言いながらすぐ側まで近づけば、彼女は目を真ん丸にしたまま、慌てたように口を開いた。
『えっ、今来たばかりだし!?大丈夫だよ!』
またそんなへたくそな嘘をついて、と心の中で思いながら、赤葦は自分の肩に掛かっているジャージを脱いで、彼女の肩にふわりとのせる。