第4章 交錯する想い
「なるほど」
納得したように頷く赤葦に、黒尾は安堵したように胸を撫で下ろした。相手の気持ちを伝えないように気を配るのも、なかなか大変なのだ。
シンプルに、なまえが好きなのはお前だから、なんて言えれば楽なのだけれど。赤葦には絶対に言わないで欲しい、という幼馴染の気持ちを裏切るわけにはいかない。
「それなら、同性の白福さんや雀田さんにも声を掛けましょうか。俺だけじゃ役不足だと思いますので」
「エッ」
いやお前しかいないんだよと言いたい気持ちをごくりと飲み込み、黒尾は慌てて続けた。
白福や雀田まで加わってやたらと話しかけでもしたら、また余計な事を言ったでしょとなまえに疑われかねない。
「あー、いや、そんな大勢で騒ぎ立てるほどの事じゃねーからさ!」
「そうですか?俺一人に務まりますかね。まぁ、微力でも彼女のためになるなら、喜んで」
そういって、赤葦は優しく微笑んだ。
そんな彼を見て、なまえが彼を好きになった理由がまたひとつわかったような気がした。
「サンキュ。んじゃ、明日からよろしくな!つっても明日で合宿終わりだから。気が向いたときでいいから連絡してやってくれると助かる」
「はい、わかりました」
黒尾の頼みに、赤葦は力強く頷いた。
どんな会話をしようかだとか、既読無視をされたら、だとか、この際もう関係ない。
好きな人が落ち込んでいるというのに、うじうじ悩んでいるのはナンセンスだ。彼女が少しでも元気になってくれるのなら、既読無視をされようと、会話が続かなかろうと、全力で元気づけてあげられる事を考えよう。
満足げに去っていく黒尾の背中を視線で追ってから、急いでノートへの必要事項を書き終え、赤葦は会議室を後にした。