第4章 交錯する想い
夏合宿最後の夜の主将会議を終え、各々が雑談している中。黒尾は、主将の代わりに会議のメモを真剣にノートに記入している赤葦に声を掛けた。
「よ、お疲れさん」
「黒尾さん。お疲れ様です、先程はありがとうございました」
顔を上げてそういってからすぐにまた彼の視線はノートへと落ちてしまった。こういう真面目なところも、なまえが惹かれた理由の一つなんだろうとしみじみ思いながら黒尾は彼の隣に腰掛ける。
「……なぁ、赤葦よ」
「なんですか」
「頼みがあるんだけど、いい?」
「…頼み?黒尾さんが、俺にですか?」
ここで初めて、赤葦はペンを持つ手を止めてノートから顔を上げた。
「そ。頼まれてくれる?」
「内容によります。俺にできる事なのであれば引き受けますけど」
「それが、お前にしか頼めない事なんだよ」
「…。木兎さんの事ですか?」
「違う。なまえのコト」
黒尾の言葉に、赤葦は少し驚いたような顔を見せる。
「なまえのヤツ、なんか元気なくてさー。だから、元気づけてやってくんない?」
「…元気がない?夕食の時は普通に見えましたけど――」
そう言いかけてから、気付いたように口を噤む。
――そういえば、やたらと黒尾さんと話していた事の内容を気にしていたような。
それと何か関係があるのだろうか、と赤葦は考えながら続けた。
「…心配ですね。何かあったんですか?」
「ん?いやー……、理由は、わかんねーんだケド」
まさか、お前のせいで元気がなくなったなんて言えるわけがない。ごまかすようにそう答えれば、赤葦が口を開いた。
「みょうじが元気になるなら、なんだってやります」
「おぉ。やっぱり赤葦かっけぇな、オイ」
「で、具体的には何をすればいいですか?」
「あー……、その、ただ普通に話し掛けたり、連絡してやったりするだけでいーのよ。あいつ友達いないクセに結構寂しがり屋だからさ。赤葦が相手してやったら、それだけで喜ぶと思うっつーか」