第4章 交錯する想い
「まず、俺と赤葦を一緒にすんのが間違ってんぞ」
『同じ男じゃん。なにがちがうわけ』
「いや、男をひとくくりにまとめようとすんなよ。研磨とリエーフが同じに見えるか?全然違うだろうが」
『………』
「それに、付き合ってもねぇのにちゅーなんてそれのほうが厚かましくね?赤葦はそういうとこちゃんときっちりしてそうじゃん、おまえもそういうほうがいいだろ」
『でもさぁ少女漫画では付き合ってもないのにバンバンちゅーとかしてんじゃん…っ』
「少女マンガと比べんなよ…赤葦が可哀想だわ」
『でもさぁ、ラインだってグループには入ってるけど個別でラインくれたことなんてないんだよ?普通好きだったらくれるじゃん、しつこいくらい。及川くんみたいにさ』
”及川”という名前を聞いて、黒尾ははっとした。
――ああ、そうだ、忘れていた。
なまえは昔から当たり前にモテモテだったし、告白されるのなんて日常茶飯事だった。しかし、中学3年になって更に開花しはじめた頃から、高嶺の花のように扱われるようになり、告白できる勇気のある者なんていなくなっていた。
高校に入ってきた時だって、学校中の注目の的だったけれど。積極的に近寄れる自信と勇気のある男なんて、そうそういるわけでもなく。
告白なんてされる方が珍しい、なんていう状況が当たり前になっていて。
そんなとき、”奴”――及川徹は現れたのだ。
月バリの取材で、墨田体育館にて撮影を行っていた折。宮城のベストセッターで有名な及川もそこに来ていて、俺たちは偶然鉢合わせた。
恵まれた容姿に、自信に満ち溢れた性格の及川は、言うまでもなく・・・あの日以来、なまえに猛列アタックしているのである。
まさに奴が、なまえの恋愛感覚をおかしくさせた元凶なのだ。
ことあるごとにラインや電話をしてきたと思えば「なまえちゃん大好き」「今日も世界で一番可愛いね」「一目惚れなんて初めて」「早く俺だけのものになってよ」なんて、キザで甘い台詞は日常茶飯事だ。
間近でそんな奴からの愛のアプローチを受け続けていれば、そりゃ、あの純粋で初心な赤葦がいくら好意を持っていたって、気付けるはずもない。