第4章 交錯する想い
「だから、おまえはもうちょっと自信を持てよ、めんどくせぇ。おまえを可愛いと思わない男なんてほぼいないと思え!いたらそいつは、B専でデブ専の変態ヤロウだ」
『それはクロが私びいきだからでしょ』
ネガティブも、ここまでくると面白いものである。
「いや、違うだろ…普通わかるだろ…おまえいつも騒がれてんだろ、可愛い可愛いって」
『好きな人から可愛いとか、好きって思われなくちゃ意味ない。好きな人から好きって思ってもらえるんなら、どんな容姿だろうと、幸せだもん』
小さな口をとがらせながら、そんなことをいう幼馴染の健気さに。
”赤葦もおまえのことが好きだぞ”と言ってやりたい気持ちを、黒尾はなんとか抑え込む。どうせ自分が言ったところで、こいつはまるで信じないだろうし。だからこそ、赤葦には頑張ってほしいのだが。彼も彼で、なまえ同様(いや、それ以上?)ウブで純粋ときた。こんなにも互いが想い合っているのに当人同士が気付かないなんて、なんともじれったいことこの上ない。
「んじゃおまえは、赤葦に好かれてないと思ってんの?」
『当たり前じゃん』
「へえ…なんでそう思うの」
『そんな態度微塵も感じないし。それに、昨日…』
「昨日なに?」
『クロが気遣って二人にしてくれたじゃん』
「おお」
『それでね、階段踏み外したら赤葦が受け止めてくれたの。そしたらめっちゃ顔近くて、いー匂いするし、超どきどきしてっ!!でもね』
「でも?」
『……ぐいって、顔離された…』
どうやら、それが相当ショックだったようだ。
今日は朝からどことなく元気がないな、と思ってはいたが、どうせまた赤葦と二人っきりになれたのに何も言えなかった~~とかいつも通りのくだらないことで落ち込んでいるのだろうくらいに思っていたのだが。
『普通、好きとか可愛いとか思ってたら顔離したりしないじゃんっ!露骨に離されたんだよ、ぐいって!絶対おまえとはちゅーしたくねぇからって意味でしょそれ!?』
「…いや、違うと思うけど」
『じゃあクロだったら!?好きな子の顔がめっちゃすぐそこにあったら!?ちゅーするでしょ!?』
「ま、するね」
『ほらぁ!!もーやだ』
両手で顔を覆いしゃがみこんでしまった幼馴染の頭を、黒尾はしゃがみこみぽんぽんと撫でた。