第4章 交錯する想い
「じゃ、なーんで何もしねぇの?」
突然掛かった黒尾の言葉に、昔を思い返していたなまえははっとする。
『……だって』
「だって?」
『何をすればいいのか、わかんないもん…』
「せっかく俺が機転聞かせて連絡先聞いてやったのに」
『う…だってなんて送ればいいかわかんない…それに、もしラインして既読無視とかされたら超ショックだし』
――うわあ。同じこと言ってるよ、こいつら。
黒尾は心の中で突っ込んだ。
『それに、白福さんと雀田さん言ってた。赤葦は女の子に連絡返さないで有名なんだって。学校でもモテるらしいし。前音駒に練習試合きたときも、うちの生徒が騒いでたの見たし』
「いや、おまえが言うか、それ」
『彼女いないってさらっと白福さんたちが言ってたの聞いて安心してたけどさ。女の子に興味ないんじゃないかなって思えてきて』
「なにそれ、ホモって言いたいのおまえは」
『ちがくて!今は、ってこと。バレー一筋ってかんじじゃん?』
「ま、それはここにいる奴らほとんどそうなんじゃね。でもそれとこれとは話が違うだろ、バレー一筋でも女に興味ねぇやつなんていねぇだろうよ」
『まぁ、そうなんだけどさ…』
もじもじと、なまえが俯く。
「なに、おまえはどうしたいの?赤葦と友達でいたいの?彼女になりたいの?どっちなの」
『、は!彼女とか、なにいってんの!』
真っ赤になって慌てるなまえに、黒尾は吹き出した。
「ぶひゃひゃ、どんだけウブなの、おまえ"ら"」
『か、彼女とか気が早すぎだし!?そんな図々しくて厚かましいこと思ったことないし!?』
真っ白な頬を紅く染めてして、大きな目をきょろきょろと泳がせながら否定する幼馴染を見ながら、黒尾は思う。
――なんでこいつは、こんなにも可愛らしいのにも関わらず。こんなにも自信がなく、謙虚というより弱虫なのか。
まぁそれは昔から変わらないので性格の問題なのだろうけれど。