第4章 交錯する想い
『――ちょっと、クロ!待って!』
食堂を出て、なまえは見慣れた大きな背中目掛けて声を掛ける。
振り返った奴の顔は、むかつくほどににたり顔だ。
「何~?」
『何じゃない!さっき!』
「さっき?」
『…赤葦に…っ!余計なこと、言ってない!?』
言ってから、自分の頬が熱くなっていくのを感じてなまえは俯いた。
「余計なことって?たとえば~?」
相変わらずのイジワル野郎だ、と心に思い、ぎろりと目の前の幼馴染を睨むように見上げた。
『ほんとムカつく!わかってるくせに!』
そんななまえの反応に、黒尾はぶひゃひゃと笑いながら続けた。
「余計な事"は"言ってないと思うよ~?」
『"は"って何!"は"って!何か言ったんだやっぱり!?』
焦り倒すなまえの姿が面白くて、黒尾の笑いはとまらない。
「ぶひゃひゃひゃ」
『もし何か言ったんなら…』
「言ったんなら?」
『…超~~ヒドいことするから!!』
「ぶひゃひゃひゃ!!超~~ヒドイことwwあーおもしれぇ」
『…クロきらい』
「あー怒んなって!言ってねぇし言わねぇから安心しろ」
なまえは『ほんと?』と恨めしげな顔で黒尾を見上げている。実はちょっと余計なこと言った、なんてことはもちろん内緒だ。
「本当だって。今までだって言ったことないだろーよ?」
『…まぁ確かに』
納得したように頷くなまえに、黒尾はまたにやける。
「おまえさぁ、ちょっとくらい積極的に行ってみたら?」
『はぁ!?』
「赤葦だってモテないわけじゃねぇだろ、あいつカッコイイし」
『…そんなのわかってるもん』
黒尾の言葉に、思わずしゅんと俯く。
――赤葦がかっこよくて、モテることなんて。そんなこと、当の昔から知っている。