第4章 交錯する想い
「おいおい、まさか本当に一回もしてねぇの?」
「…だって、なんて送ればいいんスか」
「なんかあんだろ、日々の出来事とか」
「いい天気ですね、とか、暑いですね、とかつまんないことしか思いつかないですし」
「別にそれでもいいだろ、LINEなんてそんなもんだろ」
「でももし俺がみょうじにLINEを送ったとして、既読がついたのにも関わらず返事が来なかったらマジでへこむと思います。だったら送らない方がマシじゃないですか」
淡々とそういった赤葦に、黒尾は目を見開いて驚いている。
「お前…意外とめんどくせぇのな」
黒尾からの言葉に、表情の乏しい赤葦は珍しく顕著に顔を顰めた。”めんどくさい”だなんて、生まれてこのかた言われたことがなかったからだ。常に自分は他人をめんどくさいと思う側の人間だと思っていたのに。まさか…自分もそう思われる側の人間だったとは。
「……そうかもしれないです」
「まぁけど確かに、既読無視はつらいわな」
「でしょう」
「でも送らないことには何も始まんなくねぇか」
「始まりもしなければ終わりもしないですし」
赤葦の言葉に、黒尾は眉を顰める。
「赤葦、お前さ」
「はい」
「もしかして、なまえが初恋?」
「…は、!」
あまりの直球すぎる質問に、つい言葉が詰まる。
「図星か」
にやり、と笑う黒尾から顔を反らして、赤葦はこくりと申し訳程度に頷いた。
「ぶひゃひゃひゃ!!おまえ"ら"本当ウブだねぇ~!!おんもしれぇわぁ~」
そういって急に爆笑しだす黒尾に、赤葦は心底うざそうな顔を向けた。
『クロー赤葦ー!』
突然掛かった声に、赤葦の肩がびくりと跳ねる。
まさか聞こえてはいないだろうか、内心焦り倒しながら恐る恐るなまえの方を向けば、いつもと変わらない表情にほっと胸を撫で下ろした。
「どした?」
『蛍くんもグループLINEに追加していい?』
なまえの問いに、黒尾はまたにやつきながら赤葦を見た。
「イーヨー」
『わーい!はい、これID』
「…いや、全然このグループ入りたくないんですけど」
なまえは自身のスマホを嫌がる月島にぐいぐいと渡した。