第1章 きみを見つけた日
到着した烏野の部員達を寝泊まりする部屋まで案内し、大まかな説明を終えたなまえは、その足で体育館へと急ぐ。体育館の前には、副主将である海信行が立っていた。
『海さーん!烏野のみなさん到着しました!』
「お、お疲れさん。ありがとなー。烏野以外、もうアップ始めてるよ。みょうじ、今日も頼むな」
『はい!!』
体育館を覗いてみれば、目に見えそうなほどの熱気で溢れ返っている。
音駒をはじめ、梟谷、森然、生川のメンバーも海の言った通りすでにアップを開始しているようだ。
シューズを履き替え、体育館へと足を踏み入れる。体育館の中にいる他校の面々は、しょっちゅう行われる合同練習の度に顔を合わすだけあって、もう見慣れた顔だらけだ。
その中でも、特に直ぐに視界に入る男の子を見つけたなまえは、ぱたぱたとその人物のもとへと駆け寄った。
『赤葦ー!!』
その名を呼べば、彼は声に反応し驚いて振り返る。あまりに突然掛かったその声に、口に含んでいたポカリを危うく噴き出してしまうところだった。
「…!ゴホッ…、みょうじ…っ!びっくりした」
いつもは気怠げに伏せられている、切れ長の三白眼を大きく開いて驚いたあと、彼はふっと優しく笑って見せた。癖っ毛なのか、髪の毛は相変わらず所々ぴょんぴょんとハネている。
二年生ながらに強豪である梟谷学園の副主将を務める赤葦京治は、常に冷静沈着で試合の流れを的確に読む梟谷の司令塔である。いつも冷静で視野が広く、どんなことにも動じない彼だが、ただ一人だけ、目の前にすると動揺してしまう人物がいる。
『おはよ、赤葦』
にこ、と笑う彼女の眩しい笑顔に、赤葦は紅く染まった頬を誤魔化すように会釈をしてみせた。