第4章 交錯する想い
「・・・」
――合同遠征の度に、どこか気の合うらしい黒尾さんと木兎さんが自主練をするようになって、それに自然と付き合わされることになったみょうじと俺。四人で自主練をするのが習慣になって3か月ほど経った頃、すなわち今年の春頃――・・・
やっとの思いでスマホデビューを果たした木兎さんが、いつも以上に騒がしくて。それは合同練習中の、自主練中でもおかまいなしに続いていた。
「なあなあ!俺スマホデビューしたんだぜ!」
「いや、遅くね」
「何ッ!?」
黒尾さんと木兎さんのやり取りを聞きながら俺は、もう何度目かわからないこの木兎さんのスマホ買ったんだぜアピールにいよいよ疲れていた。LINEを覚えたのがよほど嬉しいらしく、くだらないスタンプを朝から晩までしつこく送ってくるこの先輩の煩わしさに嫌気がさして、今朝こっそり通知をOFFにしたところだ。
「LINEしようぜ黒尾!!」
「やだ、お前しつこそう」
その通りです、と言いたい気持ちを飲み込み、スクイズボトルに口をつけた、そのとき。
「あーッ!!俺なまえちゃんとLINEしたーい!!」
木兎さんの口から出た言葉に、思わずポカリを吹き出しそうになった。こういうことを平気で口に出せるところは、正直羨ましいと思う。自分には、連絡先を聞く勇気なんてとてもじゃないけれど、ない。
「おいおい、お前がなまえの連絡先聞こうなんざ100年早ェんだよ」
「なんでだよッ!!別にいいじゃん!!ケチ!!」
「……あ、」
瞬間、思いついたように、黒尾さんがこちらを見た。
「?」
「そういや俺、赤葦の連絡先知らねーわ」
「ああ、確かにそうですね」
黒尾さんとは、割と仲が良い方だと思う。こうして合同練習がある度に自主練をする仲だし、よく話もする。けれど、連絡先の交換はまだしていなかった。
「なら、四人でグループLINEしようぜ~」
黒尾さんの提案に、木兎さんはヘイヘイ言いながら興奮している。
いや、この人(木兎さん)がグループLINEなんて始めたらうるさすぎて日常に支障が・・・と言いたい気持ちをなんとか飲み込んだ。
だって。”四人”ということは。