第3章 幻覚ヒーロー
一同は、さっさと片付けを終わらせ急いで食堂へと駆けこんだ。流し込むように食事を終わらせ、各自解散した頃には、時計はもう22時を回っていた。
『月島君!お疲れ様』
「あ、お疲れ様デス」
『お風呂行かなくて平気?遅くなっちゃうよ』
競い合うような速さでダッシュしていく木兎と黒尾と日向を指差しながら、なまえは言った。
『大人げないね~、あのダブル主将たちは』
そういって、隣にいる赤葦にあはは、と笑いかける。
「木兎さんは言うまでもないけど、黒尾さんも大概だよね」
主将のお目付け役である赤葦となまえの苦労が垣間見えた瞬間だった。
「…お二人とも、大変デスネ」
自分には絶対ムリだ、と思いながら月島は、目の前の二人に労りの言葉を掛けた。
『でも、あの二人を見てるの、結構楽しいよ』
そういって、また楽しそうに笑う。なんだか彼女の笑顔を見ていると、一日の疲れが不思議と和らいでいくように感じた。月島は、彼女の隣で笑う赤葦を見て、この人も同じことを思っているのだろうな、なんて、思いながら。
「みょうじ、早くシャワー浴びないと体冷えるよ」
赤葦の言葉に、なまえははっと気づいたように顔を顰めた。
『赤葦と月島君もね!!今日もお疲れ様。ゆっくり休んでね!また明日』
そういって、飛び切りの笑顔を最後に、小走りで駆けて行った。
見えなくなるまで彼女の背中をぼーっと見つめていれば、赤葦が口を開く。
「俺たちも行こうか」
「あ、ハイ」
二人は肩を並べ、シャワー室まで向かう。あまり口数の多くないこの二人の間に、勿論会話などない。若干の気まずさを感じながら月島は、先ほどの試合を思い出し、はっとしたように口を開いた。
「そういえば」
「?」
「…みょうじサンって。バレー経験者ですよね?」