第2章 太陽と月の出
『あ、ありがと……赤葦』
「いえ、本当の事言っただけなんで。これ、食べたら?好きでしょ」
そういって赤葦は、自身の皿に乗っていた唐揚げを二つほどなまえのお皿に乗せた。
「おお!じゃあ俺も!!」
木兎が食べかけのコロッケを乗せようとした瞬間、それは素早く赤葦の右手に遮られた。
「木兎さん、それ食べかけでしょう」
「あ、ばれた?」
バレるも何も。
「つーか、人のこと言ってないでツッキーももっと食え!!」
そういって、なまえの皿に行く事を阻まれた食べかけのボクトコロッケが、何故か月島の皿にやってきた。
「…木兎さん、やめてください。あげるなら、せめて食べかけじゃないものにしてくださいよ。そんなことしてたら、もう自主練に付き合ってくれなくなりますよ」
「えっ!マジで!?」
赤葦の注意に、急に不安そうになる木兎。此の人は本当に、高校3年生なのだろうか。
『あ!そうそう。明日から、月島君来てくれるって』
「エ(まだ行くとは言ってない…)」
「お、マジで。よかったじゃねーか、木兎」
「おお!!俺の熱意が伝わったかぁ~~!!」
”みょうじさんに誘われたからですけど”と、いいたい気持ちを月島はご飯と一緒に飲み込み、木兎の食べかけコロッケを端に追いやった。
「あ、つーかさ。昼、二人で仲良さげに何話してたワケ?」
黒尾がにやにやしながら、向かいに座っているなまえと月島の顔を交互に見た。そして、なまえの隣で静かに食事を取っていた赤葦の箸がピタリと止まるのを見て、黒尾は更ににやけた。
「…別に、特にこれといって」
『そうだよ。そんなこと聞いてどうすんのさ』
黒尾は、にたり顔で赤葦を見た。
「ツッキーズルイぞ!!なまえちゃんと二人っきりでスイカ食べてたなんて!!俺に内緒で!!」
木兎までノッてきた。しかも、”俺に内緒で”ってなんだ。しかも、”ツッキー”って。山口じゃあるまいし、なんて心に思いながら月島は小さくため息を吐いた。なんでこう、バレー部には騒がしいのばかり集まるのだろうか。