第2章 太陽と月の出
「…あー……考えておきます…」
『前向きに!?』
「……ハイ」
渋々そう答えた月島の返事に、なまえはまた嬉しそうに笑う。
『やった!木兎さんもクロも喜ぶよ、ね、赤葦』
「そうだね」
嬉しそうななまえを見た赤葦が、ふっと目を細め優しそうに笑う。月島は、そんな彼の姿に少し驚いた。
「?月島、どうかした?」
「あ、いえ…赤葦サンが笑うとこ初めて見たんで」
『え、ほんとに?赤葦、実はよく笑うよ!ね?』
「そうかな?あまり言われないけど」
おそらくそれは貴女の前でだけなんじゃないですか、となまえに言いたい気持ちを飲み込み、月島は二人から視線を逸らした。
食堂に入れば、閉まる時間ギリギリだからか誰もいなかった。貸切だーウェーイと、騒いでいる木兎の横で、もくもくと食事をお盆に取っていく。月島にとって、他校の人と、しかも先輩と、一緒に食事を取るなんてことは初めてだったし予想だにしていなかったことだった。
端から赤葦、なまえ、と並び、赤葦の向かいに木兎、なまえの向かいに黒尾が座ったので、月島は手招きしているなまえの隣に座ることにした。そして、なまえの前にあるお皿の上にはサラダとフルーツしかのっていないことに気付きついつい二度見してしまう。いかにも西谷が見たら怒りそうなメニューだ。
「…あの、それしか食べないんですか」
『うん。夜はね、少なめ』
少なめ、どころの話ではない。
小さな器にちんまりとサラダが盛られていて、その横には申し訳程度のフルーツが3切れほど。とてもじゃないけれど、食事とはいえないメニューだ。