第2章 太陽と月の出
月島の問いに、なまえは振り返ってから考えるように口を開いた。
『…うーん。バレーはたかが部活で、将来役に立つかもわからない、確かにその通りだと思う。でもさ、どうであれ月島君は、きっとこの高校3年間、バレーを続けるよ』
真剣に、真っ直ぐに目を見ながら言うなまえに、月島は思わずこくりと息を呑む。
『じゃなきゃ、今、ココにいないと思う。こんなきつい練習、続けられないよ。投げ出すのは簡単だもん。きっとさ、月島君も、何処かで探してたんじゃない?”本気でバレーをやる理由”を。どうせ三年間費やすならさ、線引きして適当にやるより、全力でやったほうが”カッコイイ”に決まってるじゃん?』
「………」
『だからさ、木兎さんが言ったとおり、バレーにハマる瞬間を見つけようよ。それが、月島君がバレーを本気でやる”理由”になるから』
きっと、と付け足してからなまえは笑う。太陽のような笑顔に目を細め、月島もつられるように口角が上がるのを感じた。
「…ハイ。ありがとうございます」
小さくだがはっきりと返事をした月島に、なまえは再び嬉しそうに笑った。
「――行くよ」
そんななか、なまえの細い腕を掴んだのは赤葦だ。
『あ、片付け――』
「もう終ったから」
『え、赤葦相変わらず早っ!』
「早く行かないと食堂閉まるって」
『そうだ!ご飯ご飯!』
「ほら、月島も、早く行こう」
「…あ…ハイ」
赤葦と月島の視線が一瞬交差し、すぐにふいと逸らされた。