第2章 太陽と月の出
「ストレート打ちが試合で使い物になるようになってから。元々得意だったクロス打ちをブロックにガンガン止められて、クソ悔しくてストレート練習しまくった。んで次の大会で同じブロック相手に全く触らせずストレート打ち抜いたった。その一本で”俺の時代キタ!”くらいの気分だったね!!」
言いながら木兎は、鋭い目つきで月島を見た。
「――”その瞬間”が有るか、無いかだ。将来どうだとか次の試合で勝てるかどうかとか一先ずどうでもいい。目の前の奴ブッ潰すことと自分の力が120%発揮された時の快感が全て」
「―――…」
「まぁそれはあくまで俺の話だし誰にだって当て嵌まるワケじゃねぇだろうよ。お前の言う”たかが部活”ってのも俺はわかんねえけど間違ってはないと思う。ただもしも”その瞬間”がきたら、それが――お前がバレーに”ハマる”瞬間だ」
木兎の言葉に月島は目を見開く。
「ハイッッ」
そしてパチン、と手を叩く音が響いた。
「質問答えたからブロック跳んでねー」
「ハイハイ急いで」
「ええっ!?ちょっとあの…!!」
嘆きも虚しく、月島は呆気なくダブル主将に捕まってしまったのであった。
なんだかんだで自主練を終え、月島が転がった球を片付けていれば横から白くて細い腕がその球を拾い上げた。
「…あ、」
『お疲れ様、月島君。いいよ、片付けはやっておくから。夕飯、行っておいで』
にこやかにそういうなまえに、月島は照れた顔を背け球を取った。
「いや、僕1年なんで。センパイが先にどうぞ」
『いや、私マネージャーなんで!選手が先にどうぞ』
そういって月島の手からボールを取り、なまえは籠に球をひょいと入れた。
黒尾と木兎は入り口で汗を拭きながら楽しそうに雑談していて、赤葦は逆サイドの球を拾いながらテキパキと一人後片付けをしている。
「…あの、」
『うん?』
「…さっき僕が聞いたこと、あなたはどう思いますか?」