第2章 太陽と月の出
「おや?」
「おやおや?」
「おやおやおや?」
「…聞きたいことがあるんですが…いいですか」
月島の問いに、黒尾と木兎が「いーよー」と口を合わせて答えた。
「…!すみません。ありがとうございます。…お二人のチームは、そこそこの強豪ですよね」
「ムッまぁね!」
「全国へ出場はできたとしても優勝は難しいですよね」
「不可能じゃねーだろ!!」
『まぁまぁ』
「聞きましょうよ過程の話でしょ」
ぷんすかとムキになる黒尾と木兎を、なまえと赤葦が宥めると、月島は静かに続けた。
「僕は純粋に疑問なんですがどうしてそんなに必死にやるんですか?バレーはたかが部活で、将来履歴書に”学生時代部活を頑張りました”って書けるくらいの価値じゃないんですか?」
月島の問いに、木兎がゆっくりと口を開く。
「――ただの部活、って………」
急に神妙な面持ちになった木兎の様子に、月島は息を飲む。
しかし、木兎の口から出てきた言葉は――。
「なんか…人の名前っぽいな…!!」
「!おお…タダ・ノブカツ君か…!いや待て!ちげーよ!”たかが部活”だよ!」
「!!ぐあぁ!?そうか~~っ!人名になんね~っ!」
くだらない言い合いをする木兎と黒尾に、月島は呆然としている。
「…ツッ込んだ方がいいですか?」
「いいよ限りがないから」
『うん、やめといた方が身のためだね』
赤葦となまえは慣れている様子だ。
「アーっ!眼鏡君さ!」
木兎が思いついたように、月島を見る。
「月島です…」
「月島君、さ!バレーボール、楽しい?」
「………?…いや…特には…」
「それはさ、へたくそだからじゃない?」
「!?」
「俺は3年で全国にも行ってるしお前より上手い!断然上手い!」
「言われなくてもわかってます」
「――でもバレーが”楽しい”と思うようになったのは最近だ」