第2章 太陽と月の出
日が暮れ始め、辺りが暗くなってきた頃――練習を終えた面々は、各々自主練を始めだした。
「なあなまえ”チャン”よ。どーだったよ、メガネ君」
第三体育館では、毎度恒例の自主練メンバーである黒尾、木兎、赤葦、なまえの四人がボールネットを囲んでいた。
『気にしてないみたいだったよ。月島君、いい子だった。見た目はとっつきにくそうだけど、話してみたら全然そんなことなかったよ。高校生らしい一面もあってさ』
「なになに、なまえちゃん、あのメガネ君と話したのかー!?」
「昼間、一緒に西瓜食べてましたよね」
赤葦の口からぽろりと出た一言に、三人は一斉に赤葦を見た。
『えー!赤葦知ってたの?』
「見えたんで」
ぼそりとそう答えた赤葦を、黒尾はにやにや笑いながら見ている。
「さっきメガネ君スパイク練誘ったらさー、きっぱり断られた。なまえちゃんが仲良いんなら、なまえちゃんに頼めばよかったなあ」
木兎がそういえば、赤葦がすかさず反応する。
「木兎さん、別に仲が良いわけじゃないでしょう。今日たった一度話しただけなんですから」
「あ、そーかあ。そーだな、赤葦!」
そんな赤葦と木兎のやりとりにますます笑いがこみあげてくる黒尾。
「赤葦ィ。おまえかわいいとこあんのな」
「は?なんですか急に」
「あかーしが可愛い!?なんで!?どのへんが!?」
そんなやり取りをしていれば、入り口の方から微かに聞こえてくる足音に、なまえは振り返った。
『月島君!!』
なまえの声に、一同は勢い良く体育館の入り口を見る。
其処には、少し気まずそうな顔をした月島が立っていた。