第2章 太陽と月の出
『ううん、西瓜、美味しいよね!隣で食べてもいいかな』
そういってもう片方の西瓜を手に取り、なまえは背の高い月島を見上げた。
彼女にそんなことを言われて(しかも上目使いで)断る男なんているのだろうか、と月島は頭の中で思う。特に断る理由もないので、ドウゾ、と小さく頷いた。
そっと地面に腰をかければ、なまえもその横にちょこんと腰かける。少し距離が近いような気がするのは、自分の気のせいであってほしいと思う。
タンクトップから覗く真っ白で滑らかな肌がひんやりと、火照った月島の腕に当たる。
『月島君はさ、普段自主練とかあまりやらないの?』
「…そうですね。昨日初めてやりました」
『え、初めて!?初めての自主練相手が木兎さんとクロとか…大変だったよね。お疲れ様…』
「いえ…」
月島のそっけない返事に、会話はあまり盛り上がらず、二人の西瓜を食べるシャリシャリという音だけがその空間に流れていた。
『…昨日、さ。クロが失礼なこと言って、ごめんね』
「え?…ああ…いえ、別に大丈夫ですよ。気にしてませんから」
『悪気はないんだ、アイツ、昔からああやって人のことおちょくるの。嫌な気持ちにさせちゃってたら、ごめんね』
そういってなまえは、困ったように笑う。
「だから大丈夫ですって。当たり前の事を言われただけなんで」
『当たり前のこと?』
「はい。そうですケド」
月島の答えに、なまえは目を真ん丸にして月島をじっと見つめている。
「…ナンデスカ」
『いや、どの辺が当たり前なのかなって。私には、月島君って、センスの塊にしか見えないから』
「…塊……」
『日向君にはさ、確かに才能を感じるよね。でも、月島君には日向君にはない、いや、ほかの人にはないセンスがあると思うなぁ』
「………」
『才能はさ、開花させるものだけど…センスは磨くものでしょ?前、読んだ漫画に書いてあった!』
そういって、なまえはにこりと笑う。その言葉に、笑顔に、月島は大きく目を見開く。