第7章 36℃
三年一同からブーイングをくらいながら、赤葦はさっさと着替えを済ませて鞄をロッカーに仕舞いながら思う。
どういう断り方が正解だったのかはわからない。確かに今まで何度か告白された事はあるけれど、変に優しくする方が逆に相手のために良くないと思い、きっぱりと断ってきた。
だって、脈の無い相手に優しくされる方が、諦められなくて辛くなることを知っているから。
――現に、自分がそうだった。
なまえの事を好きになって、恋という感情は、幸せで甘いことばかりじゃないということを痛いほどよく知った。優しくされればされるほど、側に居れば居る程、好きな気持ちは増していくし、独占欲や嫉妬といった醜い感情も増していく。
だからこその返答だったのだけれど。
どうやら女性陣や先輩方からはブーイングの嵐のようだ。
なんやかんやと文句を言われているうちに、あっという間に朝練が始まる時間だ。ぶーたれる先輩方をあしらいつつ、体育館へと急いだのだった。