第7章 36℃
【おはよー!こちらこそありがとう。今日も頑張ろうね!】
大好きな”彼女”からの返信に、思わず口元が緩みそうになるのを、赤葦ははっと気づいたようにこらえた。携帯を見ながらにやけるなんて、気持ちい悪いにも程がある。
これからはこうして、特に用があるわけでもないのに、なまえと連絡がとれるのだ。連絡をするのに、理由なんていらないのだから。
その幸せを噛み締めるように、慣れない手つきでスマホの文字盤をぽちぽちと打っていれば、後ろから声がした。
「あれ、赤葦がラインなんて珍しいじゃん」
瞬間、赤葦の肩がびくりと揺れた。振り向けばそこにいたのは木葉と小見で、赤葦の携帯を覗きこむようにこちらを見ている。
「え、赤葦がライン返すなんてすごくね!?まさかついに!?」
「何々、あかーしが何!?」
「木兎うるせぇ。ま、赤葦モテるしなぁ。しょっちゅう告白されてるもんな」
「そうそう。こっぴどく振ってるとこしか見たことないけど」
「エエーッ!?あかーしそんなにモテんの!?」
好き勝手に盛り上がる先輩方にはあ、とため息をついて、赤葦が口を開く。
「人聞きの悪い事言わないでください」
「だってそうだろー。この前うちのクラスのヤツが、”すみませんがあなたに興味がありません”って振られたってグレてたぜ」
「うわ、言葉のチョイスがえげつない」
茶化すように言う木葉と小見に、赤葦は淡々と続ける。
「中途半端な嘘や優しさは逆に相手を傷つけてしまいますので。本当の事を言っただけです」
「うわ、何このハイスペック男すげぇむかつく!!」