第1章 きみを見つけた日
その夜―――音駒の男子が寝床とする教室では、早々に食事とシャワーを終えた研磨と犬岡と日向が、敷かれた布団の上で雑談をしていた。
「翔陽の速攻は相変わらずすごかったなぁー!」
「サンキュー、犬岡。でも、あれじゃ今までと変わらないんだ…おれは、強くなるためにここにきたんだ」
研磨は会話を聞いているのか聞いていないのか、ピコピコと音を出しながらゲームをしている。
「あっ!なぁ、あの音駒のMBって何者なんだ!?」
「…ああ…一年の灰羽リエーフ…ロシア人と日本人のハーフだよ」
「は、はーふ!?かっけぇぇ!!前の時はいなかったよな!?」
「うん…リエーフは、高校からバレー始めたから…烏野に行ったゴールデンウィーク辺りはまだほぼ素人で、あの時はベンチ入りメンバーしか行ってないからね」
「あれで高校から!?」
「うん。それなのに一緒に組まされたりして大変だった…合わせようとしてもタイミングいつもバラバラだったし…もう慣れたけど…」
「研磨さん、ため息ばっかりついてましたもんね!」
「へぇぇぇ~!!研磨でも、読めないことってあるんだな!」
「リエーフが特殊すぎるんだよ…今はほぼもともとの身体能力とセンスだけでやってるね…あと身長…」
「確かにあの身長はズルい!!」
「いろいろ恵まれすぎっす!でも負けないっす!!」
「あ!!それとさそれとさ!!誰あの超美人は!!」
日向が瞳をきらきらとさせながら問う。
「なまえさんのこと!?うちのマネージャーの!」
犬岡が目を輝かせながらすかさず答えれば、日向もまた目を輝かせながらうんうんと頷いた。
「なまえさんっていうのか!あの美人さんも、この前の練習試合いなかったよな!?」
「…うん…なまえはあのとき体調崩してたんだよね」
研磨がそう答えた、ときだった。教室の扉が、勢いよく開いた。
『研磨ー!!いる!?』
そこに立っていたのは、今まさに三人が話をしていた張本人だった。
「なまえさん!お疲れ様です!」
犬岡が勢いよく立ち上がり、律儀に挨拶をすれば、日向もそれにつられて慌てて立ち上がりお辞儀をした。