第7章 36℃
それから帰ってすぐに、私とクロは研磨の家にバレーボールのビデオを持って行って、三人で見た。なんだかんだ、いつも研磨は夢中になって見ていたりして。
研磨は、わかりやすいんだ。やりたくないことはすぐわかるし、顔に出る。でも、好きな事なら、ちゃんと一生懸命やるんだ。
夢中になってバレーのビデオを見ながら、私やクロが気付かない様なところに気付いて大声をあげたりして。
そんななか、クロが言った。
”「研磨やっぱお前セッターになれよ!"参謀"って感じでカッコイイぞ…!」”
”「―――"参謀"!!」”
あれは間違いなく、そのカッコよさげな言葉に響いた顔だったと思う。
”「それにセッターはあんまり動かなくていいポジションなんだぞ!」”
それが決め手の言葉となったが、それは大嘘である。
けれど。
それから私たち三人は、毎日一緒にバレーをすることになった。
男子と女子とでもちろん別れてしまうから、一緒のチームでいてそうでないようなものだったけれど。練習が終わってからも、嫌がる研磨を無理矢理引き連れて、河原で三人でバレーに明け暮れた。夜遅くまでビデオを見て研究もした。気付けば私もすっかりクロに感化されて、バレーバカになってた。
そんなこんなでバレーチームに入ってしばらくして、初めての練習試合の時。みんながお弁当を食べているなか、クロは一人だけコンビニのおにぎりを食べていて。
クロのおとうさんは、朝は早いし、夜は遅い。そんな忙しいおとうさんに、お弁当を作ってほしいだなんて、私だってきっと言えないだろう。
その日以来、私はお母さんに料理の仕方を聞いて、練習して、お弁当は自分で作ることにした。もちろん、クロの分も。
クロも、クロのおとうさんも、申し訳ないからなんて言っていたけれど、いつかいいお嫁さんになる練習台だから、と無理矢理押し切った。
クロ一人だけお弁当じゃないのは、なんとなく嫌だったから。