第6章 恋の方程式
『――片思いしてる人の事、諦めないの?』
なまえの口から突然飛んできた言葉に、赤葦は思わず言葉を詰まらせた。
「、え」
『片思いってわかってるのに。諦めないの?』
ぐさぐさと心臓に突き刺さる言葉に多少なりともダメージを受けながら、小さく頷いてみせる。
「……まぁ、うん」
『なんで?』
「え」
なんだろう、彼女の言葉に若干の圧を感じる。大きな瞳に射抜かれて、思うままに口を開いた。
「……そもそも、人を好きになることって、そんな簡単に諦めのつく事なのかな。俺は人を好きになるのって、今の人が初めてだから。…諦めるのなんて、無理だな」
『………そうなんだ』
どうしてか、彼女の顔が暗くなった気がして。また自分は余計な事を言ってしまったのだろうか、と内心焦る。先日、孤爪に釘を刺されたばかりなのに。先ほど、励ましてあげられるようになりたいなんて言っておいて、早速傷つけてたんじゃなんの意味もないじゃないか。これ以上墓穴を掘るわけにはいかないし、そもそも今日は彼女を元気づけるために来たのに。帰り際に落ち込ませてしまっては、黒尾さんがしてくれた事も、弧爪が助言してくれたことも、全て水の泡になってしまう。
「…まぁ、俺の話はいいから。みょうじは?あれからどうなの?」
『……別に、何もないもん』
「………」
――どうしよう。
なんだか拗ねているように見える。
そういえば。この前、部活中にさりげなくこういう事柄に詳しそうな木葉さんにそれとなく聞いてみた。女の子は、自分の好きな人の話をするいわゆるコイバナという類の話が好きなんだとか。