第6章 恋の方程式
『おにぎりめっちゃ食べてたもんね、前!自主練の時!』
「…ああ、うん。美味しかったから」
『おにぎり、美味しいよね。私も好き!』
「…また食べたいな」
『じゃあ、おにぎり屋さん行く!?』
「いや、みょうじが作ったやつ」
赤葦の言葉に、なまえの表情がぴしゃりと固まった。
何かまずいことを言っただろうか、と一瞬焦る。が。杞憂だった。すぐに、彼女はほんのり頬を赤らめて、笑って頷いてくれた。
『…じゃあ、また自主練の時に作るね!』
「うん、楽しみにしてる」
彼女の顔が少し赤く見えるのは、夕陽のせいだろうか。パンケーキ屋を出た時には、もう辺りに夕陽が差し込んでいた。楽しい時間というのは、本当に、あっという間だ。
『赤葦、今日はありがとう』
駅が見えてきたところで、なまえが改めて言った。
「いえ、こちらこそ。ありがとう」
『あはは、なんで赤葦もありがとうなの』
「いや、だって。貴重な時間を」
『それはこっちのセリフだよ!こんな暑いなかパンケーキ屋さんなんて並んでくれて、しかも、ご馳走までしてくれて…』
「俺でよければ、いつでも」
『え?』
「また来よう。みょうじがパンケーキ食べたくなったら、いつでも」
赤葦の言葉に、なまえは驚いたように目を見開いてから、慌てて顔を逸らしてから続けた。
『そんな事言ったら…!毎日誘っちゃうかもよ!』
「うん、喜んで」
またわかりやすく驚いたような顔をするなまえが、なんだかおかしくて、どうしようもなく可愛くて、自然と口元が緩む。
「はは、みょうじって見てると面白いよね」
『お、面白い!?え、顔が!?』
「いや、そういうところ」
あはは、と目を細めて笑う赤葦に、なまえもつられて笑顔になる。二人で笑い合っていれば、あっという間に駅についてしまった。