第1章 きみを見つけた日
「…そろそろアップに戻りますよ、木兎さん」
「えーもう?もっとなまえちゃんと話したーい」
「はいはい、後でまた自主練のときに話せばいいでしょう」
「あかーし、もしかしてヤキモチ?」
「……馬鹿なこと言ってないで行きますよ」
「へーい。じゃ、なまえちゃんまた後で!」
「…じゃあ、また」
『はい、2人ともまたあとで』
木兎と赤葦のいつも通りのやりとりを、なまえはにこにこと聞いていた。
この二人のやりとりが、なまえは結構好きだったりする。にこにこと二人の背中を見送っていれば、背後に気配を感じた。振り返ってみればそこには、なまえのTシャツの裾をちょこんと引っ張っている研磨が立っていた。
『あ、研磨。布団敷いてくれてありがとう』
「…うん。ねぇ、翔陽に、会った?」
『あ、そうそう、今日、烏野の一年コンビ、補修なんだって。テストで赤点とっちゃったみたいで』
「え…」
残念そうな顔をする研磨に、なまえは少し驚く。まさか研磨が、他人の事で一喜一憂するなんて。思わず感動してしまう。
『研磨…!!』
「…何…」
『珍しいなって思って。会いたかったな、研磨の”友達”!』
「…別に、まだ友達ってほどじゃないし…」
『照れないの!今度ちゃんと紹介してよね』
「…照れてないし…」
そんなやりとりをしていれば、体育館に準備を終えた烏野のメンバーが入ってきた。
―合同遠征でのルールは至ってシンプル。各々アップを取ってから、ひたすら全チームでぐるぐると試合をやる。1セットごとに負けた方はペナルティ(ペナルティは開催地の高校によって変わる。音駒ではフライング、コート一周)。というのが、毎度恒例になっている。
黒尾となまえが烏野にルールの説明をし、遂に烏野高校初参加の合同練習が始まったのだった。