第6章 恋の方程式
『うわあ…!!』
フルーツやらクリームやらでキラキラと飾られているパンケーキは、雑誌で見た写真より豪華に見えた。思わず瞳が輝いてしまって、感嘆の声を漏らしていれば。視線を感じて、思わず顔をあげると、ふ、と微笑む赤葦と目があった。
『あ、ご、ごめん!思わず感動して!』
「はは、なんで謝るの。嬉しそうな顔が見れてよかった」
ナチュラルにそんなことを言ってのける赤葦に、思わず目を見開いてから、慌てて顔をそらした。絶対、今、顔が真っ赤だ。
「…ひとつだけ、聞いてもいい?」
赤葦からそんな言葉が飛んできて、俯いたままなまえはこくりと頷いてみせる。ひとつと言わず、いくらだって聞いてくれて構わないのだけれど、今の自分にはそんなことを言える余裕なんてなかった。赤くなっている顔が早く落ち着かないかな、なんて思いながらパンケーキを見ているふりをしていれば、赤葦が言いづらそうに口を開いた。
「今日、ここに来るの、本当に俺とで嫌じゃなかった?」
『え』
そんな質問に、思わず顔を上げてみれば、真剣な赤葦と目が合った。何故そんなことを聞くのか全く分からない。嫌どころか、この上なく幸せなんだけれど。そう言いたい気持ちを飲み込んで、口を開く。
『嫌なわけない!すごい嬉しかったよ!!』
真剣な表情でそう答えれば、赤葦はきょとんとした顔でしばらくこちらを見つめてから、突然、安心したように「はあああ」と大きくため息をつきながら俯いてしまった。
「そっか…。よかった…」
『え、急にどうした赤葦…?』
突然俯いた赤葦にそう投げかければ、彼はスン、といつもの表情で顔をあげた。
「…いや。合宿の最後の日の夜、俺、ろくな言葉ひとつ掛けてあげられなかったから。次の日もよそよそしかったし、嫌われたかなって、思って」