第5章 手に負えない (我妻善逸)
「頼むよ!!頼む頼む頼む!!結婚してくれ!いつ死ぬかわからないんだ俺はだから結婚して欲しいというわけで!!頼むよォーーーッ」
「・・・・・」
道の真ん中で女性に縋り付く惨めな同期の姿を見た私は絶句した。最終選別では直ぐに弱音を吐き自分に自信が持てないと自嘲的な発言をする少年だ。過去には好きな女性に騙され借金を背負わされた過去があるらしいのに懲りずに女性に縋り付いている姿に頭が痛くなる。無理無体な人だとは思っていたがここまでとは…縋り付かれている女性も困り果てているようだ。
「道の真ん中で何をやっているんですか!?嫌がっているでしょう!!」
「あっ!隊服、キミは確か最終選別の時の・・・」
「・・・・・です」
「そうだ!ちゃんだ!!」
目を輝かせながら私に抱き付いて来る。その隙に女性に「今の内に早く行って下さい」と伝えると善逸さんは「おいーっ!」と騒ぎ始める。
「その子は俺と結婚するんだ!俺の事好きなんだからな゛っ!?」
女性は怒りと嫌悪感からか善逸さんの頬を叩き始めた為に私は慌てて止める。任務があるのにこんな事に関わっている場合なのかと頭を痛めた。
「いつ私が貴方を好きだと言いましたか!!具合が悪そうに道端で蹲っていたから声を掛けただけでしょう!!」
「俺の事好きだから心配して声掛けてくれたんじゃないの!?」
「私には結婚を約束した人がいますので絶対ありえません!それだけ元気なら大丈夫ですねさようなら!!」
「待って!!待っ・・・何で邪魔するんだ!」
「・・・人助けをしただけです」
人喰い鬼を殺す事が仕事だと思っていたが人に迷惑を掛ける者を止めるのも大事だ。怒鳴り始めた善逸に対して侮蔑の眼を向けると今度は泣き喚き始め耳を劈く。同期であり最終選別を突破したとは到底思えない情けない姿に溜め息を吐く。