第1章 出逢い (冨岡義勇)
『どうしてこんな・・・っ』
「俺の仕事は鬼を斬ることだ。傷口に鬼の血を浴びると鬼になる。人食い鬼はそうやって増える」
男性は私に近づき身体を触る。怪我をしてないか確認しているようだ。やはり先程の男性は人喰い鬼だったようだ。そんな事を考えていると「早く家に帰れ」と言われハッと顔を上げると安心感から涙がポロポロと溢れ落ちた。
『助けて下さり・・・っ・・有難うございましたっ』
「・・・泣くな」
男性は私の頬に手を当て涙を拭き取る。優しい人だと思った。
『あの・・・お名前をお聞きしても宜しいでしょうか?』
「・・・冨岡義勇だ」
名前を呟くと「お前は?」と聞かれ慌てて『・・・です』と名前を言う。
「か・・・覚えておこう」
夜道に女一人で歩くなと注意され、私は義勇さんと一緒に家まで送ってもらった。
歩いている途中に彼は鬼殺隊の隊士であること。中でも“柱”と呼ばれる最上級剣士の一人であることを話してくれた。その話をすると訝しそうな表情になったが。
『・・・鬼殺隊』
人喰い鬼を狩る力を有した剣士だそうだ。誰かの為に自分の為に戦う義勇さんが格好いいと思った私は憧れと尊敬の眼差しで彼を見るとその視線に気づいた義勇さんは「・・・なんだ?」とぶっきらぼうにこちらを見る。
『格好いいです』
「・・・な」
微笑みながらそう言うと義勇さんはフンッと鼻を鳴らし顔を逸らすが頬が赤らんでいたのが見えた。お礼を言われたり格好いいと褒められるのは慣れていないようだ。
家まで送って下さった義勇さんに是非泊まっていって下さいと言うと彼は少し悩んだ後に頷いてくれた。
彼と会ったその日から世界が違って見えた。
義勇さんはたまーに会いに来てくれて私の無事を確認してくれる。その優しさと真面目さに私は『有難うございます』とお礼を言い笑顔を見せたのだった。