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【鬼滅の刃】短編夢小説

第8章 ※幸せな時 (不死川実弥) ※


※裏描写有り※
※鬼滅の刃短編夢小説"刹那"の続き。
※無惨様を倒した後の設定。


晴れ渡る空の下で涙を流す。
長く続いた絶望と苦難を乗り越えようやく得た幸せな時間を噛み締める。
「いってらっしゃいませ」
「あァ」
赤ん坊を抱き上げ旦那様に挨拶すると彼は視線を逸らす。未だに慣れていないのだろうかと頭を悩ませると抱き寄せられ触れるだけの口付けを交わせる。
私は頬を赤らめ「不死川さん」と呟くと「名前で呼べ」と睨まれてしまった。彼は年齢を重ねても怒りっぽい。
「・・・ごめんなさい。実弥さん」
顔を俯け小声で名前を呼ぶと彼は私の顎に手を当て持ち上げると再び口付ける。驚き固まると内側に深く潜り込まれお互いの舌が絡み合う。
「ん・・・っ!」
「・・・・・」
唇が離れると私は頬を真っ赤にさせ息を荒くする。彼は優しそうな笑みを見せ稼ぎに出掛けた。
私は赤ん坊のお世話をしながら柱として鬼狩りをしていた頃を思い出す。あの時の実弥さんは鬼に対して人一倍強い敵意を向けていた。鬼だけでなく仲間にも。私は柱として彼に認められるまで酷く時間が掛かった。顔を合わせる度に喧嘩していたが気が付けばいつも彼が私の傍にいて守ってくれていたような気がする。宿敵無惨を葬ったが死んでいった隊士は数知れず。鬼殺隊最強と云われる柱でさえ何名も殺されてしまった事を思い出すと胸が苦しくなり涙を流す。実弥さんも弟さんを亡くしてしまっていた。私は辛うじて一命を取り留めいつも傍にいてくれた柱である実弥さんと共に生きていきたいと思い籍を入れた。最初は嫌がられたが生きる目的を見失っていた彼を見捨てられなかったのだろう。山奥に家を持ち子供を授かり今は穏やかに暮らしている。鬼狩りとして血反吐を吐き鬼を倒していたあの日々はもう無い。こんなに平穏な暮らしが出来る日が来るなど想像をしていなかった。実弥さんとの間に出来た我が子を胸に抱き入れその身体を優しく揺すりながらあやす。
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