第7章 刹那 (不死川実弥)
感謝の言葉を述べる筈が彼の前ではいつもこうだ。自分の不甲斐無さに涙を溢しそうになり唇をきつく噛み締めるとその姿を見た不死川さんは溜め息を吐き何故か私の頭を荒くがしがしと撫でる。
「ーーーなっ!」
突然の行動に目を見開き頬を赤らめると彼は鋭い目付きで私を見据え呟いた。
「次は油断するな」
「・・・はい」
鬼と戦うという事はいつ死に直面しても可笑しくは無いという事だ。柱の中でも後輩の私は素直に頷くと彼は私の頭から手を離し「行くぞ」と呟いた。慌てて後を追う。
彼は本当はとても優しい人なのかも知れない。
そう思った瞬間胸が鳴った気がした。