第3章 其の参
…だけど、一人になると先程見た"あの"夢の内容が頭にこびりついて離れない。
このまま眠りに落ちてしまえば、またあの夢を見るような気がして。
怖くて眠れない。もうあんな夢、見たくない。
そんな筈がないと思いたいけれど、母の本音は 死ぬ間際に思っていた事は、さっき夢の中で聞こえたあの言葉そのものなんじゃないか。
私は母を亡き者にした鬼狩りを恨んでいるけれど。
母は、"人間"としての母を殺した私を恨んでいるんじゃないか。
だとしたら…
私が仇を討つべきなのは、私自身なんじゃないのか。
自分のすべき事がわからない。
自分が何をしたかったのかがわからない。
私は一つの目的の為だけに、立っているつもりだったのに。
だけど違ったんだ。
ゆらゆらといつだって私の心は、風に吹かれる蝋燭の灯火の様に揺れていて。
揺らめくその気持ちに目を向ければ、ふっと簡単に消えてしまいそうだったから。
だから、ずっと知らないふりをしていたんだ。
母を殺したのは本当は誰なの?
恨むべき相手は本当に鬼狩りの男なの?
鬼狩りの男を殺してそれで満足なの?
殺したとして、じゃあその後は?
私は鬼狩りの男を殺せば、心から満足して 母にやっと会えると笑顔で心から喜んで、この命を捨てられるの?
自分自身の事なのに、自分が一番わからない。
先の見えない真っ暗な道を歩いている様な、そんな気分だった。