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ふたりだけのせかい

第3章 其の参









ーーーザァァァ




ぽつりと水滴の様なものが頬へと落ちたかと思えば、間髪入れずに沢山の雨が降り注いでくる。

進めていた足を止めふと空を見上げると、黒い雲が青い空を隠していて。
今の自分の心をそのまま現したかの様なこの天気が丁度いいと思った。




あぁ、このまま消えてしまえればどんなに楽なんだろう。




未だ消える事の無い復讐心は、母の最期の言葉を思い出した事によって ゆらゆらとまるで陽炎の様に揺れているのは紛れもない事実だった。

だけど、復讐を諦めたところでもう普通になんて生きてはいけない。
復讐のみにしがみつき生きてきた私は、其れがなくなればもう生きている意味すらなくなってしまうのだ。






再び当てもなく足を進めようとしたその時。
突然の大雨でぬかるんだ土に足を取られ、体のバランスが崩れ 転けると思い咄嗟に目をぎゅっと瞑った。

が、それと同時に何者かによって腕を掴まれ強い力で引っ張れる様な感覚がする。




「っ…」

「っ、危ねェ…大丈夫かァ」





気が付けば誰かの暖かい胸の中にいて。
その誰かが持っていた傘のお陰で、雨に打たれる事は無くなっていた。


すぐそばから声が聞こえる。
何処かで聞いた様な その声につられるように顔をあげれば、そこには神社で出会った実弥が居て、思わず目を見開く。

そんな実弥も又、私だと気付いていなかった様で、驚きから目を見開いていた。





「さ…実弥、くん…」

「お前…こんなとこで、そんな格好でなにしてんだァ」

「っ…」





何故だかはわからないが、この人にだけは今のこの姿を見て欲しくなかったと、そう思い言葉が出てこなかった。












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