第1章 其の壱
私は、母の無事を祈る為に通っていた場所である 神社の巫女として現在は存在していた。
其処の神主は無惨によって殺された。
私が此処にいたいと願ったばかりに。
そして無惨もまた、人間として存在する際には今はこの神社の神主となっていた。
何故かここでは滅多に人前に姿を現す事は無かったが。
鬼の始祖である無惨が神主なんて、世も末だ。
私が言えたことではないけれど、罰当たりにも程がある。
神や仏は 私の願いを何一つ叶えてはくれなかったが、此処は唯一母の思い出が残っている場所なのだ。
幼い頃、初詣や七五三、縁日などでこの神社には母と来ていた。
………私が憶えている今までのことはこれくらいのものだった。
これらを全て自分で憶えていた訳ではなく、私は悲しみから現実逃避をするかの様に 母亡き後沢山の記憶を失ってしまっていたが、無惨から話を聞き 徐々に思い出していったのだ。
今でもまだ思い出せない事も多い。
でもこれだけの事を憶えていれば、もう充分だった。
逆恨みと捉えられたとしても、異常だと言われたとしても、何だっていい。
もう私は復讐心を抱える事でしか生きていけない。