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ふたりだけのせかい

第3章 其の参








煉獄は、全てを話し終えた後 少し先に誰かいるかの様にそちらをじっと見つめた後、安心した様な そんな微笑みを浮かべ、間も無くして息を引き取った。

その微笑みは 今まで見たどんなものよりも綺麗で、泣きたくなる程綺麗で、暫くの間目が離せなかった。






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もう帰ろう、そう思いながらも足がすくんで動けない。
つい先程まで煩い程に早く脈を打っていた心臓は、もう落ち着いていて。
だけど、頭の中は真っ白なままだった。




「汽車が脱線する時、煉獄さんがいっぱい技を出しててさ、車両の被害を最小限にとどめてくれたんだよな」



それは未だ煉獄の側にいる少年らも同じの様で、目の前の現実を受け止め切れていない様だった。
茫然と立ち尽くし、ぽつりとタンポポ頭の少年が呟いていた。



「そうだろうな…」

「死んじゃうなんてそんな…ほんとに上弦の鬼来たのか?」

「うん」

「なんで来んだよ上弦なんか…そんな強いの?そんなさぁ…」

「うん…」



なんと言えばいいのかわからない、胸がつまる様な そんな気持ちでいっぱいになる。
自分に泣く権利なんてないと思いながらも、じわじわと瞳の淵に涙が溜まっていく。




「…悔しいなぁ。
何か一つ出来る様になっても、またすぐ目の前に分厚い壁があるんだ。
凄い人はもっとずっと先の所で戦っているのに、俺はまだそこに行けない。
こんな所でつまずいてるような俺は、俺は…
煉獄さんみたいになれるのかなぁ…」


「…うっ、うっ、ううっ……」



少年の瞳からぼろぼろと大粒の涙が止め処なく溢れ出る。
そして、タンポポ頭の少年も又、その言葉を聞いて涙を流していた。

そんな二人を見て、伊之助という少年は ぶるぶると体を震わせていた。




「弱気な事言ってんじゃねぇ!!
なれるかなれねぇかなんてくだらねぇ事言うんじゃねぇ!!
信じると言われたなら、それに応える事以外考えんじゃねぇ!!
死んだ生き物は土に還るだけなんだよ、べそべそしたって戻ってきやしねぇんだよ!!
…悔しくても泣くんじゃねぇ!!!
どんなに惨めでも恥ずかしくても、生きてかなきゃならねぇんだぞ!!」












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