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ふたりだけのせかい

第3章 其の参










「弱者に構うな、杏寿郎!!全力を出せ。俺に集中しろ!!」




下弦の壱との戦いの末、線路から外れ 横転し、色々な部分が破損している列車。
そこには 下弦の壱のものと思われる肉の塊の様なものも付着していた。

そして、その近くには何人もの人々が倒れている。
繰り広げられる凄まじい戦いへと気を取られすぎて、すぐ近くだったのに気付きもしなかった。



その列車の方からとぼとぼと近付いてくる人。
…人、なのか。あれは。
猪の被り物の様なものを身に付け、両手には二本の刀が握られている。

目の前の光景に圧倒される様に、歩みを止め 立ち尽くしていた。









『ーーー炎の呼吸 伍の型 炎虎』

『ーーー破壊殺・乱式』









無数の攻撃を前方に繰り出す技に対し、烈火の虎がその技へ噛み付くかの様に反撃をする。


耳が痛くなる程の大きなぶつかり合う音が聞こえた後、暫くの間沈黙が流れ ハァハァと荒い呼吸が微かに聞こえる。

薄れる砂埃は、消える様で消えず、息を殺してじっとその先を見つめる。






「杏寿郎、死ぬな」






かなり薄れた砂埃の向こうには、
左目は潰れ 額や腹部、至る所から夥しい量の血が流れている煉獄杏寿郎の姿があった。
それと比べ、猗窩座の傷は既に塞がり 完治している。



ほぼ互角の 変わらない力量があったとしても、人間は回復などしない。

一度負った傷はすぐには癒えない。
潰れた目はもう見える事はない。
手足を無くせば、もう生えてくる事はない。





そんな煉獄を一切動じない態度で、淡々と続ける猗窩座。





「生身を削る思いで戦ったとしても全て無駄なんだよ、杏寿郎。
お前が俺に喰らわせた素晴らしい斬撃も既に完治してしまった。
…だが、お前はどうだ。
潰れた左目 砕けた肋骨 傷ついた内臓
もう取り返しがつかない。

鬼であれば、瞬きする間に治る。
そんなもの鬼ならばかすり傷だ。」







「どう足掻いても、人間では鬼に勝てない」





ーーーゴオ…





そこにあるはずのない炎が、煉獄杏寿郎の周りに燃え上がる。
まるであの男のその心の強さ 意思の強さを現すかの様に。






「俺は俺の責務を全うする!!
ここにいる者は 誰も死なせない!!」











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