第3章 其の参
"青い彼岸花"を探す事も命じられている様だったし、猗窩座も忙しいのだろう。
そんな事を布団の中で悶々と考えていると、いつまで経っても眠れない。
むしろ布団へ入る前よりも目が冴えてしまった様にも感じる。
布団へ入ってからどのくらいの時間がたったのだろうか。
もうとっくの昔に、日付も変わってしまっている。
しんとした部屋に、あの日と同じ様にクビキリギスの鳴き声が響いていた。
こうしていれば、平和で静かな夜に思えるが、今日も何処かで鬼は人を喰らい、そして又 鬼狩りもそんな鬼を斬っているのだろう。
誰かが大切な人を失い、嘆いているのだろう。
それは、"人間"も"鬼"も。
皆が明日が来る事を当たり前だと思っている。
明日を迎えられる事、大切な人の傍に居られる事。
全てが当たり前ではなく、奇跡の連続だと言うのに。
いつ死ぬか、
いつ殺されるか、
いつ事故や事件に巻き込まれるか、
いつ鬼に喰われるか、いつ鬼になるか。
わからないのに。
「はぁ…」
考える事は次から次へと湧いてきて、終わりが見えそうにない。
思わず大きな溜息を吐き出してしまう。
考えていても仕方のない事だってあるのだと自分自身に言い聞かせる様に、瞼をそっと閉じた。
ーーと、同時に。
自室の襖の向こう側で、何やらカサリと音が鳴った様な気がして、閉じたばかりの瞼を開く。
私以外に此処へは誰もいない。
おはぎだって、今日は天気が良いから外の小屋の中で寝ている。
風の音?…いや、違う。
「…誰なの?」
こちらの動揺がバレない様に。
少し声を張り、襖の向こう側へいるであろう者へと問い掛けた。