第8章 傍に居て、抱き寄せて【R18】《宇髄》
「お風呂、ありがとうございます」
リビングに入ると彼は私の姿を見て固まった。
「…やっぱり、大きいですよね?」
なんせ身長がある彼の服を借りたのだ、スエットがぶかぶか過ぎて変なのだろうと思ったのだが
「…いや、可愛いな」
「えぇぇ?大き過ぎて、変じゃないです?」
私は指の先さえできない袖をヒラヒラさせてくるりと回った。
「そこがいいんだろ…」
怨めしそうに横目で私を見る彼は、入れ替わりでお風呂へ。
私はドライヤーで髪を乾かしながら辺りを見回す。
黒を基調としたシンプルな部屋。テーブルやソファーなどの家具は洗練されていてこだわりがあるのが伺える。
髪を乾かし終えて、ソファーに背を預けているとリビングのドアが空いた。
彼は湯上がりらしい、Tシャツにスエットを着て半乾きの髪に首にタオルと言う格好だ。
「みさ~何か飲むか?」
「あ、じゃあ暖かい物を…」
内心身構えてしまったが、彼は至って自然体で少しほっとする。
「紅茶もあるぞ」
好きだよな?と言われてて頷く。
「宇髄さん、紅茶なんて飲むんですか?」
いつも会社ではコーヒーのブラックしか飲んでいるのを見たことが無い。
「煉獄が海外出張の土産でこの間色々持ってきた。なんでも英国御用達の紅茶屋で買ってきたとか言ってたな…お菓子もあるぞ。俺は食わないの知ってる癖にみさに食わせればいいとかなんとかって…」
なんて他愛ない会話をしながら、さりげなくキッチンへ入り彼の隣に並び手元を覗き込む。
ティーカップにお湯を注いで砂糖を入れてスプーンでくるくると回すのを黙って見守る。
「…なんです?」
ふと視線を感じて彼のほうを見ると、彼はこちらを見て微笑んでいた。
「あーいや…ここにお前がいるのが新鮮だなと思っただけ」
聞けば彼は人を家に入れるのは嫌らしく、家に来るのは仲が良いらしい煉獄さんが押しかけてくるくらいらしい。
「…私もお邪魔して良かったんでしょうか?」
「…それ、愚問じゃね?お前は俺の彼女だろ?」
「……」
ティーカップを渡されてそれを受け取る。
《俺の彼女》と言う単語に頬を染めた私を見て彼は持っていたビールの缶で軽く私の頭を小突いた。
「おい、いー加減慣れろよ。こっちまで恥ずかしくなるわ…」
テレビの前に置かれたソファに向かい歩き出した彼の後ろ姿を追う。