第8章 傍に居て、抱き寄せて【R18】《宇髄》
「おじゃましま~す…」
「おー入れ入れ」
ガチャりと開けられた玄関のドアの先からは彼の匂いがして、嫌でも彼を意識してしまう。
玄関からリビングへ続く廊下を先に行く彼を追って私はパンプスを脱いで後を追う。
リビングへ入ると彼は寒いと呟いてエアコンのリモコンを手に取り、スイッチを入れた。
「しかし、いきなり降られたなぁ」
会社の仲間と飲み会の帰り
ゲリラ豪雨が私達を直撃して、近くの彼の家にお邪魔する事になった。
お蔭で二人共びしょ濡れで、私は身体をぶるりと震わせた。
「みさ」
彼はタオルとスエットを私の手に持たせる。
「玄関の出前のドアが風呂だから先に入りな」
「で、でも宇髄さんのほうがびしょ濡れですよ」
彼はスーツのジャケットを脱いで私に掛けてくれたのだ。彼のワイシャツは肌が透ける程に濡れて、銀色の髪からは水が滴る。
彼は頭に掛けたタオルで自分の髪をがしがしと拭く。
只でさえ整った顔立ちなのに、雨に濡れた彼は酷く色っぽいのだ。
そんな彼が目の前まで来て何やら怪しく微笑むものだから、私の心臓がどくりと音を立てた。
「…じゃ、一緒に入るか?」
まるで猫が逆毛を立てたみたいにビクリと肩を上げた私を見て彼は言う。
「それが嫌なら、先に入れ」
そう言われては逆らえなくて、リビングの扉を開けてバスルームへ向かった。